光のもとでⅡ
「藤の精に頼まれたら断れないわね。私に教えられることならなんでも教えるわ」
 そういえば、雅さんは未婚女性だ。でも、藤色のものは身に着けていない。藤宮の人間であっても藤色や紫紺をまとうことは特別なのだろうか。
「何? 何か物珍しいものでもあったかしら?」
 私が着物に注視してしまったからか、雅さんは自分の着物のあちこちを見始める。
「いえ……あの、藤の精とはそんなにも特別なものなのでしょうか」
「……そうね、特別よ。何がどう、とは言えないけれど、会長の誕生日や藤の会であなたほど藤色や紫紺を纏う人は稀だわ」
 雅さんの話にゴクリ、と唾を飲み込んだ。そんな私を見て雅さんはクスリ、と笑う。
「実は、私も会長に藤色のお着物をと言われたのだけれど、遠慮したの。今は藤宮に関わりたくないし、藤の精ということで注目されるのも嬉しくないから。代わりにこれをいただいたわ」
 雅さんは胸元からネックレスを取り出した。
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