光のもとでⅡ
 シャーベットを食べたあと、あたたかいお茶を飲むと翠が口火を切った。
「ずっとここに隠れていたいけれど、それじゃだめなのよね?」
 俺は何も答えず翠へ視線を向けた。
「……だから、庭園へ戻ろう――」
 翠は決意したように、庭と応接室を遮る障子を見やった。
「ツカサ、元おじい様は今日もお忙しい?」
「いや……挨拶に来る人間の応対をする程度だと思う」
「あのね、午前中に気づいたのだけど、元おじい様と一緒にいたときは誰にも声をかけられなかったし、そこまで不躾な視線も感じなかったの」
 翠は肩を竦めて苦笑する。
「だから、今日は元おじい様を頼っちゃだめかな?」
 そこで自分を頼って欲しいとは思うものの、自分がじーさんに敵うわけもなく、俺ごときでは牽制にすらなりはしない。次々期会長と言われる秋兄ほどの影響力も持たない。
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