光のもとでⅡ
 翠葉は秋斗先輩とキスはしている。もしかしたらディープキスくらいまでは経験しているかもしれない。でも、キスマークを付けられただけで擦過傷に発展させてしまった経緯があり、さらには男性恐怖症の気があるときたもんだ。
「今までのリィを見てきたら、そう簡単には手ぇ出せないんじゃない? 過去には性的なものがネックで秋斗さんと付き合うことを取りやめにしちゃった子だしさ」
 司の心境を考えると非常に申し訳ない気分になる。
「なんつーかさ、そういう意味では司っちに同情するよね。でも、秋斗さんっていう前例を見てきたわけだから、同じ過ちは犯してほしくないかな。たぶん、リィは今でも性行為に対しては恐怖感を持ったままだと思うし。それをどう司っちがクリアしていくのか見ものだな」
 唯はにたにたと笑っているけれど、俺からはため息しか出てこない。
「翠葉はどういう状況なら受け入れられるんだろうな」
「さぁ、それはリィ本人だってわからないんじゃん? ……わかることはひとつ。心の準備ができてないうちに押されたら、リィは間違いなく引く」
 自信に満ちた物言いで、唯は鼻歌まで歌い始めた。
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