光のもとでⅡ
「本当に? ……身体に触れられたことは?」
 翠を信じていないわけじゃない。ただ、秋兄に限ってそんなわけはない、と思う自分がいるだけ。
「あ――あの、……お仕置きって、今のツカサみたいにキスをたくさんされたことがあって、そのときのバイタルをみんなに知られるのが恥ずかしくて泣いちゃったことがあるの。そしたら、秋斗さんもベッドに横になって抱きしめてくれたの。そのときにね、頭や背中をずっとさすってくれてた。でも、本当にそれだけっ」
「なら、俺にもさせて」
「えっ?」
 俺は翠の隣に横になり、力任せに翠を抱き寄せた。
 華奢な身体が腕に収まり、柔らかく艶やかな髪に手を埋める。
 後頭部から首、背中、腰、と順に撫でていくと、翠の身体がひどく強張り始めた。
 若干震えているようにも感じ、背中をさする手を止める。
「……怖い?」
「怖くは、ない……。でも、心臓が潰れそう……。さっきよりも心臓がドクドクいってて、どうしよう……」
 翠の表情を確認すると、唇が震え、目からは涙を流していた。
 怖くないと言うのなら、その言葉は信じよう。けど、言葉にできない戸惑いは表情で察する。
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