光のもとでⅡ
「……大丈夫。これ以上のことはしないし落ち着くまでは何もしない……。抱いてるだけだから」
 十分ほど、抱きあったままベッドの上で過ごした。すると、
「本当だ……少し落ち着いてきた」
 まだ涙の名残のある目の縁にキスをすると、止めていた手をゆっくりと動かす。
 確認するように触れると、全身の緊張は解けていた。
 優しく背をなぞり、何度となく頭を撫でる。普段触れることのない髪の毛は、ひどく手触りが良かった。滑らかな髪を堪能しつつ、
「秋兄とは本当にこれだけ?」
 翠はコクリと頷く。そんな翠を抱き寄せ、
「ツカサ……?」
「……俺、独占欲強いのかも」
「え……?」
「俺の知らない翠を秋兄が知っているのは許せそうにない。でも――これ以上の翠を秋兄も知らないのなら、もう少し待てる気がする」
 この状況にいつまで満足していられるのかはわからない。でも、今は少し前へ進めたことに満足しているし、どんなキスであろうと拒まれなかったことにも満たされている。
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