光のもとでⅡ
「……蒼兄や唯兄が免許を取ったときも助手席に乗っていたのだけど、同年代の人の車に乗るのは初めてで、いつもと違う状況にドキドキするというか……」
「あぁ、そういう意味……。でも、これからはそれが普通になるんじゃない?」
「え?」
「一定の年になれば誰でも免許は取れるし、自分が年をとれば必然的にそういうシーンが増えるだろ」
「……そっか」
 納得したところで、今のこの緊張がなくなるわけではない。
「安心して。そんなに緊張しなくても安全運転を心がけるから。……ただ、何がきれいって言われてもそっちを見ることはできないけど」
「…………」
 これは間違いなく、蒼兄に聞いた話から釘を刺されたのだろう。
 蒼兄とドライブへ行くとき、窓から見える景色がきれいで何度となく蒼兄に「きれいだよ! きれいだよ!」と話しかけてしまう癖がある。それに対し蒼兄は、「さすがに運転中は見られないよ」と苦笑を漏らすのがいつものこと。
 そんな話題に肩の力が抜けた。
 少し浮かせていた身体をシートに沈めると、
「到着まで一時間かからないくらいだから、少し休んでれば?」
 思ってもみない申し出に少し戸惑う。
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