光のもとでⅡ
「でも――」
「今日は午前から動いてるだろ。海に着いたら多少なりとも歩くわけだし……」
 きっと気を使ってくれているのだろう。でも、せっかく一緒にいられる時間を寝て過ごしてしまうのはもったいなくも申し訳なくも思える。了承しかねていると、
「これから先、ずっと一緒にいるわけだから、今少し休むくらいなんてことはない」
「……じゃ、少しだけ」
 そう言って横にならせてもらったけれど、緊張している状態では眠りに落ちることはなく、サイドブレーキを引く音や方向指示器のカチカチいう音に耳を傾け、右隣から伝う人の存在感に意識を向けていた。

 海に着いたのは四時前。
 外に出れば容赦ない日差しが未だ降り注いでいる。それでも、夏休みという時期を過ぎたからだろうか。海水浴に来ている人影は少なく、サーファーがちらほらいる程度。
 駐車場から出て砂浜の砂を触ってみたけれど、まだ歩くには熱すぎるくらいだったこともあり、先に公園へ行くことにした。
 途中で飲み物を買って日陰を探しながら歩く。
 海辺ということもあり、植わっている植物は潮風に強いものが多い。それぞれの立て札を読みながら歩いていたら、小高い丘の上に出た。
 そこには洋風の東屋が建っていて、ちょっとした休憩ができるようになっている。
 ひとまず周りを見渡してみると、公園と海が一望できた。
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