光のもとでⅡ
「そうなのね……。あのね、実は……秋斗さんとお付き合いしていたときはそれが怖くて、秋斗さんも怖くなっちゃって、それでお付き合いしていることをなかったことにしてもらったの」
「……そうだったのね。今は……? 司くんのことも怖い?」
「ううんっ、それはないっ。ツカサのことは怖くないよ。ただ、行為が怖いだけ。あと、まだ学生でいたいから、赤ちゃんができるかもしれないことをするのが怖い」
「翠葉、セックスって生殖行為ってだけじゃないわ。もちろん、避妊しなければ赤ちゃんができる行為ではあるけれど、それ以外にも意味はあるの」
「意味……?」
 お母さんは大きく頷いた。
「スキンシップ、よ。好きな人と触れ合う時間。そうだな……触れ合い方の度合いが浅いか深いか。手をつないだり抱きしめたり、それよりも深く触れ合う。そういうもの」
 あ、と思う。咄嗟に、去年受けた性教育を思い出したのだ。
 玉紀先生もお母さんと同じく、触れ合う行為だと、スキンシップだと教えてくれた。
 今年はクラスのみんなと授業を受けたため、去年ほど自分の心に沿った授業ではなかったけれど、去年の授業を思い返せば、昨日教えてもらったことのように思い出せる。
「翠葉、大丈夫よ。いつか、翠葉自身がもっと司くんに触れたいと思うようになる日がくると思う。それまでは、悩んで、考えて、自分で決めて前に進みなさい」
「……はい」
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