光のもとでⅡ
 勉強の準備をしてツカサの家の前に立つも、緊張してインターホンが押せない。
 十分近くそうしていたら、まんまと貧血を起こしてしまった。
「私、何やってるんだろう……」
 玄関の前で座り込んでいると、携帯が鳴り出す。
 ほかの誰でもないツカサからの着信。
 出られないわけじゃないのだけど、気分的に出られなくて通話ボタンが押せない。
 そのままでいると、玄関のドアが開いた。
「……何してるの」
「貧血……」
「なんで……」
 言えるわけがない。ここにたどり着いてからすでに十分以上が経っているだなんて。
「立てる?」
「もう少しだけ待って? あと少ししたら立てると思うから」
「わかった。じゃ、かばんだけ預かる」
 かばんを渡して少しすると、血の気が引く感覚が徐々に和らぎ始めた。
 ツカサの手をガイドに立ち上がりリビングへ向かうと、ラグで座っているように言われる。
 キッチンへ行ったところを見ると、飲み物を取りに行ってくれたのだろう。
 すぐに戻ってきたツカサにミネラルウォーターを渡された。
「ありがとう」
 冷たいお水を飲んで一心地つくと、
「なんであんなところで貧血起こしてたの?」
「…………」
「なんで無言? 何か言えないわけでも?」
「……言えないわけじゃないのだけど」
「じゃ、何?」
「……インターホンが押せなくて、押せないうちに十分以上経ってて……」
「……何やってるんだか」
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