光のもとでⅡ
 数分して翠が戻ってくると、すぐに勉強を始めた。
 いつものペースで進め、時計が十時を指したところで、
「終わり。今日はここまで」
 翠は手を止めると、時計を見てから不思議そうな顔をした。
「いつもなら十一時くらいまでやるでしょう?」
「今回は余裕持って勉強してるから、そこまで目一杯やる必要はないだろ」
「……そっか」
 言ったことに嘘はなかった。でも、それだけでもなかった。
 今日は海斗がいない。翠の両親に了解を得ているとはいえ、あまり遅くまでいるのは体裁が悪い。
 先日、父さんにも釘を刺された。
「節度ある付き合いをしろ」と。
 それには異を唱えるつもりもなかった。
 いくら了承を得ているからといって、夜分遅くまでいるのは常識から外れる。父さんはそういうことを言いたかったのだろう。
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