全部、抱きしめて
「何がどうして嫌なのかって、車の中で話したじゃないですか」

「あぁ。そうだな。要するに由里子は、オレが他の女のものになるのが嫌なんだよな?」

コンクと頷く。

「どうして嫌なわけ? オレはそれを知りたいんだよ」

「それは......」

「それは、何?」

「ごめんなさい。今日は言えません」

告白なんて無理。
まだ玉砕する勇気はないから。

「そっか」

「......」

「オレはてっきり由里子がヤキモチ妬いてるのかと自惚れだったみたいだな」

“自惚れなんかじゃありません”
そう返したら大瀬良さんはどんな顔をするんだろう?

「オレは嫌だったよ」
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