全部、抱きしめて
「助けてくれた元カレには、感謝だけど。何か複雑だよな。まさか由里子に会いに来たとかじゃないよな?」

「それはないよ」

「やけに言い切るな」

直也が険しい顔つきをした。

あたしはタケルがパパになっていた真相を話した。

「ーーそいうわけだから、あたしに会いに来たとかはないって思う」

「じゃあ何で由里子の家の近くを歩いてたんだよ?」

「それは分かんないよ」

あたしだって、何となく引っかかってはいるけど。本当にたまたま歩いてただけかもしれないし。

「財布泥棒と元カレってグルなんじゃねーのかよ? 怪しい」

「それは勘ぐり過ぎだよ」

「あー、イラつく」

直也は不機嫌にそう言いながら、部屋の窓を開けた。
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