全部、抱きしめて
「あたし帰ろうかな」

「はっ?」

「だって応援必要なさそうだもん。直也がシュート決めた時、『ナイスシュー、直也』って言ってる人がいたけどあれ絶対かおりさんだし」

あたしは続けた。

「元妻と今カノに応援されて、直也だって複雑だろうしね。だからあたしは帰ります」

そう言ってしまった以上、帰らなくてはならない。

本当は直也のプレイする姿を見ていたいくせに。

「だったら帰れよ」

直也の冷たい口調にあたしは半分は傷つき、半分はイラつきながら背を向けていた。

歩き出そうとした時ーー

「なんてな。由里子が応援してくれないなら、オレも帰る」

直也が後ろから抱きしめてきた。

「人が来ちゃうよ」





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