はないろ
「え、ここ?」
「そだよー。」

着いたのはよく女の子達が通うと話題の美容院だった。

「…まさかとは思うけど」
「そのまさか。ここ、俺の家なんだよね。」

入って入って〜と促され、裏口から通されたわたしはボーゼンと立ち尽くしていた。

きらきらと輝かんばかりで美人な女の人や、今風。と言って良いのかわからないけど、とてもおしゃれな人がいた。

「こいつ今日から入れてー」
「どっから持ってきたの、この子。」

物じゃないぞ、失礼な。
…というか、入れて。とはどういう事だ。

澤村くんの胸ぐらを掴む。

「どういうことかな、澤村くん。」
「おちっ、おちけつ、おちついて此見さん!此見さん!」

ハッ、と我に戻ったわたしは、沢村君をグーで殴る一歩手前だった。
周りの人たちもわたわたしている。
これはマズい。
そう思ったわたしは咄嗟に行動した。

「すみません、騒がしくて。…えと、澤村くんに連れて来られたんですけど…わたし、何をすれば。」

すると、今風の男の人が口を開いた。

「貴方が此見はなさんですね、彼方から聞いてます。」

彼方…かなた?澤村くんの事かな。

「それで…今日からうちの美容院のカットモデルをして欲しいんですけど…」

は?
カットモデル?

「む、むりです。こんなブサイクやってられないでしょ。」
「それだからこそ価値があるんですよ!可愛いは作れる。…ていうか、もともとめっちゃかわいいと思うんですけど。」

ポニーテールの髪の毛の先をちりちりと弄りながら腰に手を回してきた。
これが一種の変人か。
ところでわたしは無自覚天然美少女ではない。
天然だとは思わないし、ブサイクなのはほんとうの事。
たまにわたし可愛いな。って思ったりもする。

するすると腰を撫でる手が止まらず擽ったくなってきた。

「あの、そろそろ…」
「えー?なんで?」

へらりへらりと笑いながら更に距離を縮めてきた。

「ち、ちょっ…」
「こんのボケカス長谷川がぁああぁあっ!何しとんじゃアホっ!!」

蹴り飛ばされた男の人。
その隣にいるのは……

「此見さん大丈夫?長谷川あーゆー奴だから気をつけて。」

澤村くんだった。
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