恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②




そして、しばらく姿を消していた父親が、小さなショットグラスを手に再び現れる。


「さあ、真琴ちゃん。これを飲んでごらん。元気になるよ!」


父親は久しぶりに会う息子のことなど意識にないようで、真琴の手にあったアルバムを取ると、代りにショットグラスを持たせた。


手渡された透明に近い液体を、真琴はじっと見下ろした。
見るからに怪しい酒だったが、この酒には、自分をもてなしたいと思っている父親の心がこもっている…。

量もそんなに多くないので、真琴は思い切ってそれを飲み干した。


飲んだ瞬間に、のどを熱いものが通り過ぎていく。それと同時に、言いようのない生臭さが、口と鼻に充満した。


真琴は思わず、飲み残していた梅酒も一気に口の中へと流し込んだ。
発作的に全て吐き出してしまいそうになるのを、胸を押さえ、涙目になって堪えた。



「……親父!!何を飲ませた…!?」


真琴の様子を見て、古庄が顔色を変えて父親を問いただす。


「何って…。気つけのマムシ酒を…」


父親は申し訳なさそうに、その酒が入った焼酎瓶を掲げて見せてくれる。

その中には、長くにょろにょろとしたマムシが入れられており…、真琴はそのマムシの姿を見て、また気が遠のいた。

酔いが回ってしまったのと相まって、体の力が入らなくなってしまった。








< 134 / 158 >

この作品をシェア

pagetop