恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②



そっと掛布団をかけ、真琴の顔にかかる乱れた髪を整え、古庄は愛おしそうに真琴の寝顔を見下ろす。



深い眼差しで、一人の女性を見つめる弟――。


晶にとっても、そんな光景を見るのは初めてだった。


しかし、横目で観察していると、晶はどうしても、いつも古庄に抱いてしまういたずら心を抑えきれなくなってくる。



「……真琴ちゃんって、着やせするタイプなんだな」


「………!?」


晶のその言葉を聞いて、ピクリを古庄の背中がこわばった。


「何だって……?!」


「いや、服を着てるとそうでもなく見えるのに、胸だってけっこうあるだろ?」


古庄は顔色を変え、振り返って晶を凝視する。


「…な、なんで、そんなこと知ってるんだよ!!?」


「夕食前に、一緒に外の岩風呂に入ったんだよ。その時、真琴ちゃん、のぼせてしまって、さっきもここで寝てたんだ。私が体を拭いて、服も着せたんだから」


要するに、気を失って正体のない裸の真琴の世話を、晶がしたということだ。
その事実を処理する間、古庄は口をパクパク開け、しばらく何も言葉にならなかった。


古庄の脳裏に、中学生の時のあの忌まわしい過去が甦ってくる。この晶は、女同士だからと言って、油断はならないのだ。



「…なっ、なっ、何も!!…やっ、やらしいことしなかっただろうな…!!?」


顔を真っ赤にして、やっと言葉を絞り出す、予想通りの古庄の態度に対して、晶は表情には出さず心の中でほくそ笑んだ。



< 136 / 158 >

この作品をシェア

pagetop