恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②

 
 

「……ということは、少しはいたんだな…」


「少しは…というより、一人だけです。大学の時に、付き合っている人がいました」


「大学の時か…、じゃあ、もう大人だな…」


含みを持たせている古庄の受け答えが、真琴も気になったらしく、その意味を探るような目線を向けた。


内容が内容だけに、古庄はそれを尋ねるべきか迷ったが、思い切って切り出す。



「真琴は、…その彼氏と、やってたのか?」



真琴の表情の上の疑問の色が、もっと濃くなる。


「やってたって、何をですか?」


いつもは打てば響くように古庄の意図を汲んでくれる真琴だが、そういうことにはやはり疎いらしい。


事実を聞き出したかったら、古庄ははっきりと問う必要があった。



「…だから、その、キスをしたり、それ以上のことだ…」



「……は!?」



ためらいがちに古庄が尋ねた途端、真琴は顔を真っ赤にして口を手で覆った。


そんな真琴の反応を、とても可愛らしく感じて、古庄の胸がキュンと鳴く。
しどろもどろになって、言葉を探して焦っている感じなのが、また可愛い。



「…それは…、付き合ってたんだから、そういうことだってしてました……」



伏し目がちにそう言った真琴の言葉を聞いて、今度は古庄が絶句する番だった。


古庄の知る真琴は、抱きしめるだけで身体を硬くして、抱きしめ返してくれるのだってぎこちない。

過去に男とそういう経験をしていることなんて、片鱗さえも感じられなかった。



戸惑いの中に、モヤモヤと言いようのない感情が立ち込めてくる。



古庄が表情を曇らせて黙ってしまったので、真琴は決まり悪くなって心配そうに様子を窺った。





< 23 / 158 >

この作品をシェア

pagetop