恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②




「真琴、俺の浴衣そっちにあるかな?」


その時、そう言いながらいきなり、古庄が座敷へと入ってきた。


その端正な顔に引けを取らないほど、健康的で均整のとれた完璧な古庄の肉体…。


辛うじて拭かれているが、浴衣も手元になかったので、当然ながら何も身に着けていない。

仲居二人と真琴の視線が、全裸の古庄へと釘付けになる。



「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ❤❤」



古庄のとんでもないサービスに、離れには黄色い悲鳴が響き渡った。





週が変わって、再び金曜日になった。

取り決めたとおりに、今日の夜から「週末婚」だ。


あの後古庄は、「週末はどんなことがあっても、どんなに仕事で遅くなろうとも、飲み会があっても、二人で過ごす」という約束を、真琴に取り付けた。


やっと普通の夫婦のような時間が過ごせる幸せを噛みしめて、古庄は朝から顔が緩んでしょうがない。


時折真琴と目が合って、ニコ―っと笑いかけると、


「学校で、そんな顔で見るの、やめてください!」


と、真琴からは見慣れたしかめっ面で返された。


嘘を吐くことが苦手な真琴は、よそよそしく素っ気ない。それこそ古庄は、邪険にされていると言っていい。


けれども、あの旅館で過ごした一夜が心の栄養になっていて、古庄はもう動じなかった。



「賀川先生の席はここですか?」


女子生徒から尋ねられる。


「うん、そうだよ」


古庄が頷くのを確認して、女子生徒は少し大きな茶封筒を真琴の机に置いた。


「それは?」


古庄は気になって、思わず訊いてみる。


「これは、体育大会の時に写真部の企画で撮った写真です。『あなたの好きな人の写真撮ります』っていう…」


そう答えながら、女子生徒はニヤリと意味深な笑みを古庄へと向けた。



「あなたの好きな人」という文言に、古庄はピクリと反応する。


女子生徒がいなくなり、真琴もまだ席には戻ってきていない。

古庄はそっとその茶封筒を取って、こっそり中の写真を出して見てみる。




古庄の口元がほころんで、抑えられず顔がにやける。


その写真には、秋晴れの空を背景に、爽やかに笑う古庄自身の姿が写し出されていた。









   「恋はしょうがない。21/2」

      ― 完 ー






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