恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
「それじゃ…。都留山のラグビー部か。花園の常連校だから、それは大変だろうね」
気を取り直して、優しい言葉をかける。古庄はあくまでも、正志から懐柔する作戦だ。
「大変どころの話じゃないよ。もう、僕、やめるんだから」
「…どうしてやめちゃうの?きついのは、どの部活だって同じよ?」
真琴が弟を心配して、台所を手伝う手を止めて、リビングへとやってきた。
生徒をなだめて説得するような口調の真琴に対して、正志もやはり生徒と同じように口をへの字にして黙り込んだ。
「そうだ。和彦さんにちょっと教えてもらったら?その…、スクリューパス?」
「あら?古庄さんもラグビーやるの?」
食事の準備の手を動かしながら、母親が話に入ってくる。
「和彦さんも高校の時にやってたのよ。今は、うちの学校でもラグビー部の顧問なの」
「まあ!そうなの?」
「ラグビー専門の体育教師がいますから、僕は補助みたいなものですけど」
母親のおかげで、ようやく和やかで和気あいあいとした会話が始まろうとしたところで……、
「……わかった。そういうことだったんだね……」
不穏な空気を漂わせて、正志がソファーから立ち上がった。
「お姉ちゃんは、そいつがラグビーやってたから、僕にやれって言ったんだね?!」
正志の指摘に、真琴の胸がドキッ!と一つ、大きな鼓動を打った。