恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②




「あ……」


そして、奥から出てきた古庄の両親は、土間にたたずむ真琴の姿を見て、言葉をなくす。


きっと両親の頭の中に思い描かれていたのは、容姿端麗な静香だったに違いない…。


そんな風に想像すると、真琴は居場所がないような気持ちにもなったが、このことは初めから想定済みだった。
想定はしていたけれども、静香のことが心に過るだけで、今でも真琴は罪悪感と切なさに苛まれる。


真琴は静香のことを振り払い、勇気を奮い起こして、両親が言葉を発するよりも先に行動を起こす。


「ご挨拶が遅くなってしまって申し訳ありません。賀川真琴と申します。9月に和彦さんと入籍しまして、古庄真琴になりました」


そう言いながら、深々と頭を下げる。
そして、頭を上げるタイミングを計っていると、母親の方の声が響いた。


「ホントに、和彦のお嫁さん!?もう結婚してるのね?んまあ!嬉しいわ!!こんなに可愛い『女の子』で!ねえ?お父さん?」


母親の顔は歓喜に沸き、父親を振り返った。
…すると、父親は眉根を寄せて、先ほどの晶と同じように小さく「チェッ」と舌打ちした。


この舌打ちに、真琴の心は再びズキンとし衝撃を受ける。
静香に比べて劣ってしまう自分が、嫁として歓迎されていないように感じて、いたたまれなくなった。


しかし、そんな父親も一瞬後には笑顔になる。


「真琴ちゃん。遠い所をよく来たね!さあ、上がって上がって!」


その豹変した態度に、真琴は訳が分からず唖然とし、目をパチパチさせた。

さっきの舌打ちは、いったい何だったのだろう…。




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