天使が舞い降りる。



「涙」





ボロボロと涙を流し続ける頭上で、優しい声がする。


それでも顔を上げられずにいると、頬を包み込むように持ち上げられた。





「サイ……」


「ほんとに……いろんなことがあったな」


そんなサイの手の上に、自分の手を重ねる。


「ありがとう、涙。今まで何回も止まりかけてた、オレの背中を押してくれて……」


押してもらっていたのは……私のほうだよ?サイ。


「それはこっちの…」


「いや、オレのセリフ」


言おうとした言葉は見事に遮られた。





「大好きだよ、涙」




知ってるよ……?


その「大好き」が、決して奈々子の「大好き」とは違うこと……。





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