ルージュのキスは恋の始まり
「今すぐマンションを出ていけとは言わない。でも、年末までには出てってくれる?」

 氷のように冷たい大河の視線。

 私の目頭が熱くなって涙が込み上げてくると、大河は腕時計を見て冷淡に言った。

「もうすぐ約束の10分だ。手間かけさせないでよ」

 大河に乱暴に手を引かれ、みんなのところへ戻る。

 涙が今にもこぼれ落ちそうだった。

「監督、良いですよ」

 大河は監督に声をかけると、私の背中を押した。

「じゃあ、始めるぞ」

 監督の声でみんな所定の位置につく。

 私は人工の雨が降る中、訳もわからず泣きながら走った。

 頭の中は凄く混乱している。

 今まで過ごしてきた日々はなんだったにだろう。

 大河は家族ごっこと言った。
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