ルージュのキスは恋の始まり
 出来る男かどうかわからないけど、こういう人種は嫌いだ。

 人の意見も聞かず勝手に判断する。

「来年の秋の口紅ですが、発色、艶、潤いが今のところ5時間持続します。また、衣服やカップに口紅がつくことはありません。工場での量産テストも・・・」

「待て。そんな資料に書いてある事が知りたいんじゃない。時間の無駄だ」

 社長が試作品を持って私に近づいてきた。

 その眼光がキラリと光る。

 すごく嫌な予感がして、1歩後ずさった。

 だが、私は彼から逃げられない。

「そんな自信作ならお前が証明しろ」

 社長はそう冷酷に告げると、私の顎を掴んでルージュを塗る。

 ルージュは溶けるように私の唇に馴染んでいく。

 だが、私は驚愕に震えていた。

「へえ、これは男ならキスしたくなるな」 

 私の唇を見ながら悪魔な顔で社長が呟く。
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