陽だまりをくれたきみが好き。



「あ……っ」



昼休みが終わる少し前。

トイレに向かうとクラスメイトである前田さんがトイレの中で立ち往生していて思わず立ち止まる。


……どう、したんでしょう。


キュっと制服を握りしめる彼女は、なにか困った様子に見えないこともない。



『ほんの少し勇気を振り絞るだけだよ』



早瀬くんの言葉を思い出してくちびるを噛む。


ドキドキ……。


……よし、頑張るぞ。



「あのっ……どうかされました?」


「川口さん……」



ゆるく二つ結びをしている髪の毛。

頬のそばかすが可愛くて、身体も細い。



「実は……その……始まっちゃって……」


「……?」


「せ、生理……」


「あ、あぁ!ナプキン持ってないんですか?」



デリカシーのない質問をしてしまったなって、言ってしまってから気がついた。


それでもコクコク素早くうなずく前田さんにポーチの中からナプキンを差し出す。


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