元殺し屋と、殺し屋









私は急いで立ち上がり、トイレに飛んでいく。




トイレは運良く誰もいなくて、個室に閉じこもる。



『もしもし?』

「氷さん・・・」

『紅羽?どうしたの?』

「・・・嘘ですよね?」

『え?』

「氷さん、私と澪鵺がパートナー組むこと了承したって、嘘ですよね?」

『・・・』

「嘘ですよね?」

『・・・』

「嘘だと、何故言わないんですか?」




涙が、静かに、音もなく流れる。




・・・殺しはもう、しないと決めたんだ。

有咲が何者かに殺された。

有咲は死ぬ間際、私に言った。

「殺し屋はやめろ」と。

その後だ。

有咲が殺されたのは。



有咲の言った意味が、分かった気がした。

有咲も私も、殺し屋という道を、さっさと逸れれば良かったんだ。

そうしたら有咲は生きていたし、有咲と高校生活を楽しめたはずなのに。







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