裏腹な彼との恋愛設計図
「何言って──っ!」


俺に怒られるとでも思ったのか、文句を言おうとして口をつぐみ、俺を見てぎこちなく笑った鈴森は、そそくさとまた一階へ下りていく。

そんな彼女を、金井さんは細めた目で追っていた。


「あいつ、可愛いでしょう。からかうとすぐキョドるし、怯えたウサギみたいで」

「……そう、ですね」


ウサギみたいかは別として、まぁ彼女のキョドりっぷりは面白い。

一応肯定すると、彼は少し身を乗り出すようにして小声で囁いた。


「でも、あんな純情そうな顔してるけど、実は胸に色っぽーい黒子があるんですよ」


──ピクッ、と顔の筋肉が固まる。

急激に醜い感情が沸き上がるのを感じていると、目の前の男の薄い唇が怪しげに弧を描いた。


「……やっと笑顔が消えた」


そう言われてはっとした。

思わず目を逸らしてしまい、動揺している自分に戸惑う。


「俺も営業マンだからか、作り笑顔とか結構わかっちゃうんですよ。この前来た時から、柊さんが無理して笑ってるの気付いてました」


……そうだっただろうか。

あの時は、セクハラまがいの発言をして鈴森を困らせるこの男にムカついていた。

軽そうな言動をして、けれど鈴森も楽しそうに笑っていて。

彼女がこの男と付き合っていたことも、まったく壁がない雰囲気も、すべてが気に食わなかった。

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