裏腹な彼との恋愛設計図
あまりにもあっさりとしたライバル宣言に、私は拍子抜けしてしまった。

岩坂さんは、テーブルに置いていた彼女のファイルやカタログを手に取りながら言う。


「あたし、今度隼人が新科店に来るのが最後のチャンスだと思ってるの。そこで彼をモノに出来なかったら、いい加減諦めるつもり」


ファイルを胸に抱いて、彼女は私に力強い眼差しを向ける。


「お互い頑張りましょ。……でも、負ける気はないから」


きっぱりと言いきった彼女は、女王のような綺麗で勇ましい笑みを見せると、身を翻して階段を下りていった。

ぽつんと残された私は、ふきんを投げ出してがっくりと肩を落とす。


「なんか私、すでに負けてる気がする……」


岩坂さん、カッコ良すぎでしょう!?

ライバルにあんなふうに潔くエールを送れる人、なかなかいないんじゃ?

さすが柊さんの元彼女……器が大きい。


……でも、私も負けていられない。絵梨子さんの言う通り、先手必勝よ!

柊さんがヘルプに行ってしまう前に、私は私に出来ることをしよう。


顔を上げた私は、改めて気合いを入れ、ゴシゴシとテーブルを拭くのだった。




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