裏腹な彼との恋愛設計図
私と柊さんの間にはたぶん何も芽生えていない。だって、そんなたいした行動は起こしていないし。

フラれるのがわかっていて告白するほどの勇気は、今の私にはないもの。


「……フラれてくださいよ」

「えっ」


突飛なことを言われ、私は手を引っ込めて矢城くんを振り仰いだ。

彼は真剣な表情で私を見つめている。


「フラれて、俺んとこに来ればいい」


──ドキン、と小さく胸が波打つ。

こういう時だけ敬語を消して、男らしさをかいま見せるなんて。計算じゃないにしても卑怯だ。


「ね。もしダメだったとしても、俺がいるから安心してください」

「それじゃ、矢城くんのこと保険にしてるみたいで嫌でしょ?」

「全然。好きな人が手に入るなら、くだらないプライドはいりません。ていうか、俺もうすでにプライドなんか捨ててるし」


自嘲気味に笑った矢城くんは、私をまっすぐ見据える。


「だから紗羽さんも、とことん食いついていったらいいと思いますよ。後悔しないように」


小さく微笑みかけた矢城くんは、適当にお酒をカゴに入れるとレジへ向かう。

本当は辛いだろうに、私を励ましたりなんかして……思ったより大人だな、彼。

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