裏腹な彼との恋愛設計図
「タイプって言うと、どうしても高校時代に好きだった人が思い浮かんじゃうんですよね」


──好きだったけれど、気持ちを伝えることも出来なかった人。

後悔を残したまま終わってしまった恋だったからか、今も時々ふとした瞬間に思い出して、胸がチクリと痛むのだ。


「へぇー、どんな人なの?」

「それは俺達も気になるなぁ」


身を乗り出して聞いてきた絵梨子さんに続く声の主は、北欧風のおしゃれな暖簾をくぐってきた古賀さん。

その後ろから、矢城くんが姿を現した。


ミライトホーム御用達となっているこのカフェバーは、仕事終わりによく立ち寄る。

メンバーはその時によって違うけれど、今日は絵梨子さんが二人も誘っていたらしい。

私は「お疲れ様です」と軽く頭を下げた。


「桐原さん宅の点検、どうだった?」

「おう、完璧だ」


自信満々に答えた古賀さんは絵梨子さんの隣へ、矢城くんは笑顔で私の隣に来る。


「紗羽さん、隣いいですか?」

「どうぞどうぞ」


二十五歳の矢城くんは、礼儀正しくて本当に好青年。

ココアブラウンのくせ毛に人懐っこい笑顔が可愛らしくて、こんな弟が欲しかったとつくづく思う。

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