裏腹な彼との恋愛設計図
「鈴森が入社してきた時、実はすげぇ動揺してた」

「そんなふうには全然見えませんでしたよ」


私が自己紹介しても、柊さんは動揺した様子なんて微塵も見せなかったと思う。


「お前に気付かれなかったのは救われたけどな。忘れられてたのか、鈍感なのか」

「忘れるわけないですよ! ただ、年齢も名字も違うから、別人だと思い込んじゃっただけで……」

「まぁ、十年も経ってれば無理ねぇよな。実際本当に変わったし、俺だってさっきクラスメイトらしき人見ても、誰だかわからない奴ばっかだったし」


……そう。思い込みと、三好くんの記憶を薄れさせ、彼が変わった十年という月日のせい。

そうでもしないと、気付かなかった自分の浅はかさに嫌気がさすばかりだ。


「ずっと……忘れることなんて出来なかったです」


もう一度繰り返し、サーモンピンクのカクテルを飲み干した。

カンパリ独特の苦味が、あの頃の恋を思い出させるように舌に残る。


どうして私が柊さんを好きになったのか、やっとわかった。

必然的なことだったんだ──彼は、三好くんだったのだから。

私はどうしても彼じゃなければいけないのかもしれない。この先も、彼以外の人を好きになるとは思えない。

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