裏腹な彼との恋愛設計図

──しかし。翌日の日曜日、会社に彼の姿はなかった。何故なら。


「柊くんは事情があって、急きょ新科店に行くことになった」


朝礼で社長から皆にそう伝えられた。

詳しい理由は教えてくれないけれど、向井さんとの引き継ぎも問題なく終わっているようだし、私なんかが文句を言えるはずもない。


「どうしてだろう……」

「さぁね……。でも木曜からは向こうに行く予定だったし、四日早まっただけだからね」


慰めるように言ってくれる絵梨子さんだけど、私は寂しさと消化不良の想いでいっぱいだった。

本当にどうして……新科店の方から来てくれって言われたとか?

でもそれなら社長はそう言うだろうし、昨日お母さんと電話をしてから急用が出来たと言って帰ったことも、何か関係があるのかな。


新科店には今住んでいるアパートから通うらしいから、会えないわけではないけれど、アパートがどこなのかわからない。

ましてや、私は彼の携帯番号すら知らないのだ。昨日、聞いておけばよかったよ……。

会ったら聞きたいことがたくさんあったのに。


「はぁー……」

「また帰ってくるんだから。それまでの辛抱よ、紗羽ちゃん」


ぽんと肩を叩く絵梨子さんに微笑み返すけれど。

向こうには岩坂さんがいるのだし、落ち着いて待っていられない。

私はこのまま、悶々とした気持ちを抱えたままでいるしかないのだろうか……。




< 214 / 280 >

この作品をシェア

pagetop