裏腹な彼との恋愛設計図
「あぁ、平気──」

「柊さん、腕が!」


立ち上がろうとする柊さんに向かって、矢城くんが叫んだ。

私も彼の腕を見て、恐怖にも似た感情に襲われる。

自分達をかばって材木が当たったらしい腕は、肘の辺りから手首にかけて擦り切れて血が滲み、打ち身のようにすでに赤紫色に変色していた。


「擦りむいただけだろ。大丈夫だ、このくらい」

「大丈夫じゃないですよ! だって血が出てるし!」

「舐めときゃ治る」

「そんなレベルじゃないですって!」


傷を見ても平然としている柊さんに、私は必死に訴える。

私のせいで怪我させちゃったのに、何もせず黙ってなんていられない。


「ちゃんと手当てしとかないと、夏だし化膿したら大変ですよ」

「そんな大袈裟にしなくたって大丈夫──」

「言うこと聞かないと、私がその傷舐めちゃいますよ!?」


………………沈黙。

柊さんも矢城くんも、目を点にしてぽかんとしている。


あ、あれ?

なんか今勢いで口から出ちゃったけど……私、とんでもなくおかしなこと言った、よね!?

「私が舐める」ってなんだそりゃー!!

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