裏腹な彼との恋愛設計図
足早に歩き出した私は、「さ、さ、紗羽さんの家~~!?」と叫ぶ矢城くんの声を背中に受けながら、車に戻った。

歩きながら、柊さんは怪訝そうに眉根を寄せる。


「おい、何でお前の家に行くんだ」

「家じゃないと手当て出来ないんで! 大丈夫ですよ、私のアパートここから近いから」

「いや、そういう問題じゃなく……」

「あ、車私が運転します!」


柊さんが持っている車のキーをもらおうと手を差し出す。

けれど、彼はそれを渡そうとしない。


「いいよ、それくらい俺がやるから。てか、鈴森って運転出来んの?」

「はい、一応。ここ数年乗ってないけど、きっと自転車と一緒で感覚は覚えてます」


……しばしの無言。

止まっていた時計が動き出したかのように、私を押しのけて運転席側のドアに手を掛ける柊さん。


「俺はまだ死にたくない」

「失礼な!」


一悶着した後、結局また運転は柊さんにさせてしまい。

私のアパートへ案内すると、夕日が赤みを増す中、二人で小さなワンルームに上がった。



< 86 / 280 >

この作品をシェア

pagetop