彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)



わたくし、菅原凛こと凛道蓮は、今夜、龍星軍4代目総長として旗揚げを決行しました。

メンバーは私一人しかいないし、複雑なチーム事情なので、新規加入もないかと思います。

よって、副総長も、親衛隊長も、特攻隊長も、遊撃隊長もいません。

俺一人で、旗揚げ集会となったのですが。




「すみません。トラックに載せて頂いたばかりに、ご飯まで頂いて・・・」

「がはははは!気にすんな、兄ちゃん!」




出発地点である十文字パーキングに向かう途中、知らないトラックの運ちゃんに声をかけられた。

どうやら、私があまりにもゆっくり運転してるので、バイクの故障で困ってるのだと勘違いしたらしい。

実際、壊れてないとわかると、目的地まで送ってくれると言った。

トラックの後ろに単車を乗せてもらい、私はトラックの運ちゃんの横に座った。

はじめて乗るトラックは、乗るのも大変だけど、見晴らしがすごく良かった。




「すごーい!僕、トラックに乗るのは初めてです!」

「がははは!その細腕じゃあ、引っ越しのバイトも無理だろうしなー?」




豪快に笑うと、トラックを発進させるおじさん。

車内に流れる演歌と、ミラーの辺りにぶら下がるキーホルダーや写真。




「あれ?この子供達は、おじさんのお子さんですか?」

「おっちゃんでいいぜ、兄ちゃん。」




男の子と女の子、2人が写っていた写真について質問する。




「俺の息子と娘だ。」

「やっぱり!家族仲がいいですね~」

「そうねでもねぇーぜ?ガキ共は、別れた女房のとこにいるからな~」

「え!?」



返ってきた返事を受け後悔する。




(とってもデリケートな答え!聞かなきゃよかった!)




〔★凛は地雷を踏んだ★〕




「す、すみません!そうとは知らずに・・・・!!」

「がはははは!謝るな、兄ちゃん!離婚理由はさすがに言わねぇーけど、息子の方が・・・オメーと同じ年グレーなんだわ。」

「あ・・・それで・・・」


(私に声をかけてくれたの・・・?)




ふいに見せた寂しそうな父親の顔。

しかし、それは一瞬のことで、元の元気な表情で言った。


< 911 / 1,276 >

この作品をシェア

pagetop