【完】ヴァンパイア、かなし

向こうも、今目の前にいるのが「クラスメイトの変わった名前の奴」だという事実にあまりピンと来ていないようで、ポカンと口を開いたまま。


「……え？君、紫倉・ブルーム・エルザ君？」


「えっと、はい」


僕と、僕に対面するリーダーグループの男子達、そして、教室で僕等の会話に聞き耳を立てていた全てのクラスメイト達が、時間が止まったように固まった。


かと思うと、鼓膜が割れんばかりの驚きに満ちた叫び声が、教室の至る所から弾け出す。


「はっ！？マジかよ！え？いや、今までより完全に紫倉・ブルーム・エルザって見た目だけど！」


「ほらー言ったじゃん！紫倉君は実は隠れイケメンだよって！」


僕に絡んできた連中どころか、教室にいたクラスメイト達までもがわっと動き出し、僕の周りに集まってくる。


こんなにも大人数に囲まれる事も初めてだし、思いもよらない反応をされるし、僕はどうして良いものか、僕だけ時間が止まったまま。


「お前、こんな綺麗な顔と目隠してたのかよー！勿体ねー！」


「髪の毛も地毛？柔らかそう」


ああもう、僕のいた世界は、僕が思った以上に分からないことばかり転がっている。