【完】ヴァンパイア、かなし
「私は君に、もっと日の当たる所を見せたいだけなんだ。だって、世界にはこんなに幸せが溢れてる」


赤嶺先輩は、なんて澄んだ瞳でこの世界を、星々を見ているのだろう。やはり、この人こそ綺麗だ。きっと、怒りも、苦しみさえも赤嶺先輩のものは美しい。


僕の中にいる化け物は、それを欲している。この綺麗なものはどんな味がするのだろうと、ざわざわと僕を浸食するのだ。


「君がその手を誰かに差し伸べなければ、誰もその手を取ったりはしないんだよ?」


言っていることが正しいから、だから、僕の心にはガツンと響く。


「そんな世界なら、僕は日の当たらない世界で生きた方が幸せだ。光の無い世界にだってささやかな幸せはあります」


そう。これまでだってそうして来た。これから先だってそれで充分だ。僕は日の光の温かさを知りすぎたのだ。


そう思うのに、なのに、どうして僕の胸の奥は痛いのだろう。痛いところは何処なのだろう。


「やはりまだあまり体調が優れませんので、僕は保健室に行きます」


そう言って立ち上がると、自然と顔に笑みがこぼれた。この笑みは、喜びや幸せの感情なんかじゃない。じゃあ何なのだろう。僕には分からない。
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