幼馴染みはイジワル課長
もしかして…




「早く飲めよ。俺は先に着替えてくるから」

「…うん」


碧は寝室に入り着替えに行ってしまった。1人になった私は、ソファーに座って残りのビールをグビグビと飲む。




別に碧と今夜そう言う事になったとしても…私は構わないと思った。

恥ずかしいとか、どうしたらいいのかわからないというのはあるけど…不思議と怖いっていうのはないなぁ。




碧こと好きだもん…


あー…だけど私に至らぬところがたくさんあると思うから、失敗しちゃったらどうしようっていうのはあるかも…

そういう怖さはあるよ…




でも…

やっぱり帰りたくない…









ガチャ



「…わっ!」


寝室のドアの横で待っていると、部屋から出て来た碧が私を見ると驚いて声をあげていた。





「ご、ごめん…待たせたかな」

「ううん…」


もう一度“帰りたくない”って言ったら、わがままになっちゃう…碧を困らせたくない。

だけど帰りたくない場合はどうしたらいいの…?






「さっきからなんだこの口は…可愛くねえぞ」

「ん゛っ 」


碧は私の尖らせている唇を指でつまみ、びろーんと伸ばす。私はとっさに顔を離した。








「や、やめてよ!」

「…俺だってお前と一緒にいたいんだよ。でも…ま、わかるだろ?」


まるで子供をなだめるみたいな口調で言う碧。これじゃあカップルというよりも、まるで兄妹みたいだ。





「…わかんないもん」

「わかれよ」

「あたっ」


碧は私のおでこにデコピンをすると、キッチンへ行って冷蔵庫からミネラルウォーターを出していた。

私はおでこを手で押さえながら寝室に入ってドアを閉めると、碧が貸してくれた部屋着からスーツに着替えリビングに戻った。そしてひと息入れた後、私は渋々家に帰ることにした。







碧のマンションから2人でゆっくりと夜道を歩く…

今日は2人の歩く距離が近くて、スピードも歩幅もほぼ同じだ。





「スーツに着替えることなかったのに…」


碧は帰宅した時と同じスーツを着ていて、仕事カバンを持っていた。どこから見ても仕事帰りに見えるし、一度帰宅したとは思えない。





「俺が私服だったらおばちゃん達変に思うだろ」

「思われたっていいよ」


それに多分だけど、うちの親はそこまで勘が鋭くないと思うんだけど…





「良くねえよ。今日はとりあえず、残業で遅くなってその帰りに飲んできたってことにする」

「どうして?付き合うことになった報告しようよ!」

「こんな時間にそんな報告するのは非常識だろ。そういうのはタイミングが大事なんだよ」


碧のその言い方は冷たいように感じて、また胸がちくりと傷む。





本当は親に報告とかしたくないのかな…

私と付き合うこと隠したいってこと?





「桜花…」

「え…」


一人で不安になっていたら、碧が私の手を握る。そして指を絡ませると、そのまま歩き出した。



不安な気持ちが一瞬吹っ飛ぶ…

単純だって思われてもいい…それが事実だから。







「明日こそ帰りにどっかで飯食うか。どこ行きたいか決めておいて」

「え?仕事帰りにデートしてもいいの?誰かに会うかもよ?」

「お前は俺の部下なんだから、別に会ったって大丈夫だよ。仕事帰りに飯食ってたって不思議じゃねえだろ」

「そっか」


碧のことだから、仕事中はあんまり話しかけるな!みたいこと言われると思ったんだけど…

夜は碧とデート出来るなら、仕事がもっとはかどりそうだな♪






「一応言っとくけど…会社では今までどおりにしろよ?あんまり浮かれんなよ」

「わ、わかってるよ」


やっぱりそこはそうなのか…

今までどおりって事は、プライベート的なことは会社では話すのはNGってことだもんね。
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