いつかあなたに還るまで


瑠璃を中心に子ども達に先導されながらやって来た志保をその目に捉えた瞬間、隼人は息をするのも忘れてしまった。まるで石になったかのように、硬直したままその姿に目を奪われている。

「あーー、やっぱり隼人にぃ固まってる!」
「やったー、予想は私の勝ちだねっ!」

そこかしこから聞こえてくる声にも全く反応できないほど。
そうしていつの間にか目の前までやって来た志保___花嫁と、どちらも動けぬまま、しばらく互いを見つめ合った。

「…隼人おにいちゃん、見とれちゃうのはわかるけど、いつまで花嫁を待たせる気なの?!」
「えっ…? あ、あぁ、ごめん。……あまりにも綺麗で、つい」

恥ずかしげもなく吐き出されたおのろけに、周囲からギャーッと黄色い声が上がる。志保は志保で真っ赤に染まって俯いてしまい、そんな二人をさすがの瑠璃も生温~い顔で見守っている。

コホンと小さく咳をして仕切り直すと、志保の両手をそっと握った。

「本当に…綺麗だ。世界中の誰よりも」
「隼人さん…」
「そしてるぅちゃん、世界で一番素敵な花冠を、どうもありがとう」
「えへへ、気に入ってくれたのなら嬉しい」
「もちろんだよ。こんなに綺麗な冠なんて見たことない。一生の宝物にする」
「うん」

もじもじ視線を泳がせながらも心から嬉しそうに笑うと、子ども達は脇の定位置へと散らばっていった。そうして中央に志保と隼人だけが残されると、二人はゆっくり手を取り合い、庭の中央にある祭壇に見立てた場所へと歩いて行く。

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