今日も、私は、なく、【完】
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「一宮さん」
行為が終わった後、彼の名前を呼んだ。
疲れが溜まっているのか、一宮さんは唸ることもなく気持ちよさそうに眠っている。
その柔らかい黒髪を撫でて、本当に無防備な人だと唇を噛んだ。
――今日のお別れは半年前から決まっていた。
一宮さんが背の低いあの子と結婚することになった。
あたしは入籍後も体だけの関係を続けることを望んで求めたけれど、彼は珍しく意思を曲げず頑なだった。
いつも不真面目な人なのに、変なところだけ頑固な人だった。
多分、あたしだけじゃなく、その他大勢の浮気相手とも関係を切ったのだろう。
そのための半年間だ。
これからは、一途に自分を想い続けてくれた彼女だけを守り続けたいんだって。バカじゃないの。
――だってあたしだって、一宮さんだけを一途に想い続けたのに。