今日も、私は、なく、【完】
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「おいしいねえ」
満足げにはしゃいだ声をあげる朝日に笑い返して、注文したショートケーキの最後の一口を味わう。
新しくできたケーキ屋さんの真っ赤ないちごの乗ったショートケーキは、甘すぎず食べやすくて、あたし好みのそれだった。
――一宮さんと別れて1か月が経ったけれど、なんの音沙汰も、勿論会うこともなく、あたしたちは完全に終わっていた。
それはきっと間違いなく良いことなのだろうけれど、やっぱり時々寂しくなったりもする。
会いたいと思ったりも、泣いたりもする。あんなに好きだったんだから。
だけどそんなときには、このショートケーキがあたしの心の支えになる。
幸せそうに笑う朝日に、
「クリーム、口の横についてるよ」
と教えてその間抜けな表情に吹き出した。
お店をでて、次はどこに行こうかと話していれば、朝日がそういえば、と嬉しそうにあたしの背中を叩く。