今日も、私は、なく、【完】



しばらくぼーっと天井の古ぼけたシミを見つめて、涙が湧いて出る前に脱いだ服をかき集め身に付けた。




最後にもう一度だけ眠る一宮さんに

「あたしの方こそ、ありがとう」

呟いて、口付けする。




――十分だと思った。


週末をあたしと過ごしてくれた4年間と、さっきの甘い声だけで。


あの瞬間だけは、きっと彼は間違いなくあたしを愛していた。


そう思って、いつものように眠る一宮さんだけを残して部屋を出る。









――そのあとバスに揺られて家に着いても、昼を過ごして夜になっても、いつものように彼から電話がかかってくることはなかった。


確実に、終わりの日である証拠だった。









――あたしは一宮さんを殺せなかった。



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