音楽が聴こえる
なんて、こじつけてみたけど。

いつもより、無防備な香田をもう少し眺めてみたいってのが、俺の本心。

「コーヒー位、奢ってやるよ」

香田は瞬きをして、俺の顔を見上げた。

それから、勢い良く吹き出してケタケタ笑う。

「そこまでさせられないよ。酔い醒ましに付き合おうとしてくれてる君に。多分、君が思ってる程、あたし酔ってないわ」

「いーや、センセ。センセは自分が思ってる程、正気じゃねぇよ。酔っぱらいは、大丈夫って言うのが常だしな」

「……へぇ。未成年の割に言うね」

「ああ、うち、そうゆー商売もやってんだ。酒は飲ませても飲まれるな的な奴」

「酒屋?」

「違げーわっ、 飲み屋だよっ!なあ……行こうぜ、センセ」

掴みっぱなしの二の腕を俺の方へ引き寄せて、香田をガードレールから立たせた。

「痛っ」

引っ張った拍子に俺の肩に背負ってたギターケースが滑って、香田のオデコを直撃する。
< 131 / 195 >

この作品をシェア

pagetop