音楽が聴こえる
今のあたしは分かってるけど。

それでもあたし自身までもが、悟の思い通りにコントロールされているようで納得がいかない。

例えそれが、あたしのためだとしても。

チリチリと胸の奥に燻るものが消えない。

悟が距離を取って話しをしようとしてるのを無視して、あたしは彼の視界に入るようにテレビの前に立った。

「どうしてそのタイミングを悟が決めるの?」

「……どうしてって聞くのかよ。知ってたらもっと早く何とかしたってか」

顔を上げた悟は、仕方なさそうに笑う。

「ねぇ。あたしのこと偽善者ぽいって思ってるでしょ」

「……思ってねーけど」

「けど、何」

「なんつーか、要らねーもんまで貰って来んだよなぁと思ってさ」

要らねーもんって。

さっきからあたしが、間違った解答を出しまくってる生徒みたいじゃん。

あたしは伸ばしたままの悟の脛に、どっかりと座って押し潰した。

「痛っ」

悟の顔が不意の痛みに歪む。

「チッ。お前のケツの骨が当たった」

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