音楽が聴こえる
「痛いようにしてんだもんっ。バーカ、酔払いっ。うわっ」

悪口を言った途端に、酔払いの逆襲に遭った。

足から振り落とされた挙句、バランスを崩してゴンッと鈍い音が響く。

堅いフローリングの床とあたしの後頭部がキスした音だ。

「うーっ、馬鹿じゃないのっ?!」

慌てた悟が四つん這いのまま、床に倒れたあたしを上から覗き込んで来た。

「おいっ、大丈夫か? 加減するの忘れた」

「もうっあたしのが痛過ぎっ」

「……コブは出来て無ねーよな」

神妙な顔をして、ずっと髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き混ぜる悟の指が気持ち良い。

彼を見上げたら、何だか堪らない気持ちになったあたしは、衝動的に悟のTシャツの裾を力一杯自分の方へ引き寄せた。

「何だよ。痛いんだろ?」

「……悟は本当に未練無いの?」

「あ?」

悟の視線があたしの顔の辺りを彷徨う。

頭を撫でていた手が、頬に触れた。

「茉奈、眼鏡は?」

話しの腰を折られて、一瞬、理解が出来なかった。
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