音楽が聴こえる
あたしの向かい側で、カップの蓋を開けて大袈裟に匂いを嗅いだ。

「俺だけで全部食っちまおうかなぁ」

いつもより子供みたいなやんちゃな笑顔をくっつけて、あたしの方をチラリと見た。

うわ、嫌な奴。
いじめっ子の顔してるよ。

「今ならオマケも付けてやる」

「オマケ?」

「おぅ、このサトルサマが何でも言うこと聞いてやろう」

……俺様か。

あたしは溜息を呑み込んで、ティラミスを見詰める。

「……別に勿体振ってる訳じゃ無いよ。ただ、別にあたしとやっても面白く無いんじゃない?」

「お前が言うと、イヤラシク聞こえんなぁ」

すぐに真面目な話を冗談に変えようとする悟に、心の底に根付いている苛立ちが膨らんで破裂した。

「もうっ、人が真面目に話してんのに!!」

「んな怒んなよ、冗談だろうが」

「その冗談、笑えないっ。サイッテー!! …… 悟は、この間からあたしに何をさせたいわけよ。肝心なことを話さないくせに。一体何なの?!」

悟は顔を上げて口元をピクッとひきつらせた。

「……茉奈は頭固てーんだよなぁ、固い頭に固い格好。今のお前のがヤバくね?」

あ……怒った。

あたしじゃなくて、悟が。
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