音楽が聴こえる
「どうせティラミス 食いたくて、もて余してんだろ? 昔からそうだもんな」

あたしは昔から甘いものに目がなくて、仕事帰りの父や悟が買ってきた深夜のアイスやケーキをよく楽しんでいた。


「昔も良く買ってくれたよね」

「省吾(しょうご)さん、お前に甘かったからなー」

悟はあたしの食べ掛けのピザに長い手を伸ばして、さっさと平らげた。

「……悟も同じじゃん。パパも悟も、いっつも二人でどっちが買ってきたお菓子が美味しいか、競い合ってたし」


悟は鼻歌混じりに皿を片付けてから、冷蔵庫の中の待望の一品を取り出した。

そして何故か二個共、自分の前に置いてニヤリと笑う。

「さて、と。これ、菓子質(かしじち)な」

「っ、何それっ」

「連弾が嫌なら、セッションと洒落よーぜ、茉奈ちゃん」

「なんて狡(こす)っ」

「……そうでもしねぇと、茉奈はウンッて言わねぇだろ? ウンッて言えよ」
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