音楽が聴こえる
「……何、気持ち良いことしてくれんの。茉奈ちゃん」

悟の胸に覆い被さる形で、お互いの肌がぶつかり合う。

「悟の背中。あたしの下着踏んでんの」

「ああ。……お前が黙って帰らねえように、踏んでた」

「それって…酷くない? ワイヤー曲がるじゃん、ブラの」

さっきまでの、あの痛い雰囲気を消したくて、軽口を叩いた。

「んなの、何枚でも買ってやっから……」

悟は抱き枕でも抱くように、長い手足をあたし体に絡めてくると、頬にチュッと音のするキスをした。

「……寝とけ」

「ねえ、あたし明日も学校。朝早いんだよ?」

「朝家まで送る……」

「悟、朝すんごい苦手じゃん」

「煩せぇ。ガッコーまで車出したって構わねぇよ、俺は。……全く……んだよ、目が覚めるじゃねえか。…茉奈は良いことしてくんねーし」

すっとぼけたことを言う悟は、少し意地悪ないつもの彼に戻っていて、あたしの髪を両手でぐしゃぐしゃにした。

「もう頭が痛いって。 悟の良いことって何よー」

「おぅ……言って良いんか?」

悟の口角の上がり具合から、良からぬことと想像出来た。

その笑いを含む唇は、あたしの耳朶の輪郭をそっとなぞる。
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