White Magic ~俺様ドクターの魔法~
「あっ、これうちの病院のヘリだし」
テレビを観ながら彼は、驚いた顔をしていた。
「あっ、ほんまや」
私達の目に映ったのは、瞬さんが勤める病院のヘリコプターでそれを説明している人こそ、瞬さんを救急へと誘った人物。
―――高畑實 救急部部長―――
「高畑先生、めっちゃ、まじめに答えてるし!」
高畑先生もまた、週1回、うちの病院に非常勤医として来てくださっているので、私も知っている。
普段は、おやじギャグを言うような先生なのに、テレビではやけにまじめにドクターヘリについて語っている。
その姿を見るだけで、お腹が痛くなるくらい笑っていた。
「あの先生、ほんまおもしろすぎやし!」
彼は、両脚を伸ばし、手を後ろに付いて、天井を見上げ、まだ込み上げて来そうな笑みを堪えていた。
その彼の表情は、希望に溢れていて、キラキラしていた。
「でもさ・・・」
急に体を動かしたかと思ったら、あぐらをかいて、手を前で合わせ一点を見つめていた。
「腕は、最高なんだよな」
その眼は、今までに見たこともないくらい真剣なもので、私は声を発することもできなかった。
何かを考えている彼を横目に、私は片付けを始めた。
最近、彼は、ふと自分の世界に入ってしまうことがなっているような気がする。
それは、疲れているからだろうと思っていた。
できるだけ、休ませてあげたいので、私は、片付けると帰ることを切りだす。
「えっ、帰るの?」
私の声に我に返った彼は、目を丸くしていた。
「うん、明日も仕事やから」
「そっか・・・」
自分を納得させるように頷いて静かに言うと、立ち上がり車の鍵を手に取った。
「送って行くよ」
「うん」
バスで帰ると言ったところで、絶対にそんなことをさせてもらえないので、甘えることにしている。
そして、家の前で別れると、ゆっくりと家の中に入った。
お風呂に入り、寝ようとしたが、なかなか眠ることができなかった。
あの、瞬さんの何かを考えているような表情が頭から離れないから。