甘いヒミツは恋の罠
 紅美が慌てて資料室のドアノブに飛びついてドアを開けようとしたが、外側から鍵をかけられてしまい、びくともしなかった。資料室の鍵は内側の鍵はなく外側からしか開錠も施錠もできない。


「あの! すみません! 中にいます!」


 ドンドンと扉を拳で叩いてみるが、虚しくその音が部屋に鳴り響くだけだった。


「誰!? そこにいるんでしょう?」


「…………」


 ドアの外側にまだ人の気配を感じる。紅美は訴えかけるように声をあげた。


「開けてくださ――」


「皆本さんが悪いんですよ……」


 外側から聞こえた声は、聞き覚えのあるよく知る声だった。それだけ言うと、ドアから離れて走り去る足音が小さくなっていった。


(嘘……)


 紅美はその声の主に愕然とし、真っ暗な闇に突き落とされるような感覚に陥った――。
< 192 / 371 >

この作品をシェア

pagetop