甘いヒミツは恋の罠
「朝比奈店長もお疲れ様でした。これからまだお仕事されるんですか?」


「まぁな。北野、今回の資料はよく出来ていたな」


「そ、そんな……事ないです」


 朝比奈の褒め言葉に結衣が頬を赤らめて俯く。朝比奈はそんな様子を冷たい目で見下ろした。


「あぁ、本当に良く出来てるよ……出来すぎてるくらいにな」


「え……?」


 朝比奈の低い声に結衣が顔をあげると、じっと見つめる冷ややかな視線とぶつかる。穏やかでない朝比奈の瞳に見射られて、結衣は身体を硬直させた。


「あ、あの……私、そろそろ帰りま――っ!」


 目を泳がせながら、結衣が身体を翻してその場を去ろうとしたその時、朝比奈がぐいっとその細い腕を掴んだ。


「痛っ……」


「お前が作ってきた資料は間に合せのものだといったな? 作成の日付が昨日になっているのはなんでだ?」


「えっ……そ、れは――」


 気まずそうに結衣が唇を噛んで視線を逸らした。
< 197 / 371 >

この作品をシェア

pagetop